OpenDolphin の現状と今後

 以前にもオープンソースで「あった」電子カルテ OpenDolphin のことは、あれこれ記事にしたが、最近、気になったことをいくつか。




あるリンク集

本家(dolphin-dev)の github io のページにこんなリンク集がある。


いやあ、リンク切れが多いw

新宿ヒロクリニック、吉井クリニック、新見公立大学あたりがそう。

YouTube あたりでも商用ユーザーさんの紹介動画があったはずだが(確か慶友クリニックさんが紹介されていた)、全て削除されていた。

元々、オンプレミスの商用版のユーザーさんは少なかったが、さらに減っているようだ。

元町皮膚科さんのリンクは生きていたので、覗いてきた。
少し驚いたのは、いまだに Java 1.8 で運用している点。
JDK をアップデートして M1 Mac で動かすときに少しばかり苦労するかもしれませんね。
(なお、OpenDolphin-2.7m 系列は、ann2b 先生が『OpenDolphin-2.7 を M1 Mac にインストールする』で既に実現しています)

それはともかく、商用版は完全に終焉期になった感がある。

自力運用組も、技術・熱意のないところはけっこう運用を取りやめているようだ。
OpenDolphin 登場当時は、インストールして導入しただけでも、それなりにメリットがあったと思うのだが、今はそれなりに使えるクラウド型が比較的安価に導入できるので、それらメリットは薄い。

今から考えると奇妙に見えるかもしれないが、昔は、「OpenDolphin をビルドしてインストールしました」だけでもネット上ではそれなりに注目されたのだ。

だが、長期運用していく上では、インストールするスキルとはまた違ったスキルが求められる。
Java のアップデートに合わせてライブラリの変更が求められることがあるし、それに伴うソースコードの変更も必要になってくる場合が多い。
そこまでくると OpenDolphin のソースコードにあたる必要があるが、残念ながらソースコードを解説したドキュメントはほとんどない。
自分で解読するしかないのだ。
医師や医療事務員でそこまできる人はほとんどいないだろうし、中小の医療施設に流れてくる SE レベルはピンキリでスキルのない SE では役不足だろう。

OpenDolphin が注目されたのは、登場時のみで、その後、それほど普及しなかった原因はこういったところにあったのかもしれない。


OpenDolphin → 他社電子カルテ乗り換え時の注意点

そういった背景もあるせいか、「当社電子カルテは OpenDolphin からのデータ移行もできます」的な宣伝をする業者も出てきた。

が、これ、けっこう問題がある場合が多い。

最近、関係者から総ツッコミを食らったのはこの記事。(色々問題ありそうな内容で、削除か訂正されそうな雰囲気もあるので魚拓とった)

さも、データ移行できるかのような印象を受けるが、実際にはカルテ記載内容のテキスト情報と処方の文字情報だけ。

当たり前だが、これだけだと元の電子カルテ(OpenDolphin)のデータの一部だけしか移行できてないから、ドルフィンの稼働環境は法に定められた期間は維持しておく必要がある。

処方にしても薬剤を一意に指定する識別子(レセ電コード番号)まで移行できてないので、システム入れ替えたときには処方は1から打ち直す必要がある。

それだったら、移行期にはモニタ2面使うのと大差ない。

結論としては、移行期にちょっぴり便利になった程度で、あえて記事内で言及するほどでもない内容。

炎上商法でも狙っていたんですかね?

(追記)やはり、というべきか

※文中の文言は、先生へのインタビューを元に作成しております。

の文言が記事末尾に加わった。
要するに、この先生の解釈ではこうこうですよ、この人はこう思っているだけですよ、というニュアンスを出したかったのであろう。
メーカーとしては、流石に内容の全てに責任を負うわけないはいかない。

OpenDolphin HTML Viewer

久々に某先生が ORCA のメーリスに登場
いわゆる「データ移行ツール」の html 出力版を案内した。
我々からすれば何を今さらといった感があるのだが、開業医の先生方にも、おおむね、好意的に受けとめられたようである。


OpenDolphin HTML/PDF Viewer

OpenDolphin HTML Viewer はさらに進化(PDF 出力も対応)して OpenDolphin HTML/PDF Viewer となった。

まあ、ここら辺は猪股先生ならおてのものでしょう。


OpenDolphin と DolphORCA

一般にあるソフトウェアを維持していくだけでもそれなりにコストがかかる。
使用した言語自体が進化していることもあれば、周辺環境が変化していたりするからだ。

Java で書かれ EE 環境で動作する OpenDolphin の場合は、

・Java9 くらいから目立ち始めた文法上の変更

・JavaEE 環境から JakartaEE 環境への移行

に対応する必要があった。

これはけっこう大きな変化で、この状況だと、少々の手直しで延命を図っていくというアプローチよりも基礎設計まで踏み込んで対応するという手法の方が結果的にコストがかからないということはよくある。

OpenDolphin-2.7m 系列の場合、前者が OpenDolphin Ver6 であり、後者が DolphORCA ということになるのだろう。



コメント